| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-103  (Poster presentation)

陸ガニは果実採食者?それとも破壊者 ~圧力とハサミの形状からみた採食方法~【A】
Are land crabs fruit feeders or destructors? ~ The relationship between land crab pressure and claw shape ~【A】

*平塚那菜, 琴野遥香, 丹羽悠(浜松学芸高等学校)
*Nana HIRATSUKA, Haruka KOTONO, Haruka NIWA(Hamamatsu Gakugei High School)

温帯海岸林に生息するアカテガニ、クロベンケイガニといった陸ガニでは、果実採食や種子散布に関する知見が不十分である。本研究では温帯海岸林における陸ガニの生態学的役割を解明することを目的として、3つの実験を行った。1つめは、採食実験である。水槽内で陸ガニに果実・種子を与え、24時間後に回収し、未採食、表面のみ採食、破壊の3つに分類し、採食率と種子破壊率を算出した。その結果、2種の陸ガニは果実・種子を採食し、特に油脂を含む乾果を好む傾向が認められた。また、破壊率はクロベンケイガニで著しく高く、種子食者としての側面が強い可能性が示された。2つめは、ビデオ撮影により採食行動を解析した。アカテガニは鉗脚の先端部をピンセットのように用いて種子を把持し、種子を口器に押し当て、表面の油脂のみを採食した。一方、クロベンケイガニは鉗脚の基部で種子を破壊し、もう一方の鉗脚の先端部で種子を把持して口器へ運んだ。3つめは、鉗脚モデルを用いた種子破壊実験である。鉗脚モデルを木材で作製し、支点から1cm(基部)と7cm(先端部)にアカメガシワ種子を1個設置して破壊に要した力の大きさを測定した。基部では2.7N(N=10)で種子が破壊されたのに対し、先端部では18.0N(N=10)と6.6倍の力を要した。以上より、クロベンケイガニの鉗脚形態は種子破壊に適した形状をしていることが明らかになった。本研究より、陸ガニ類が温帯海岸林植生に対して種子散布者または種子食者として植物の定着や更新に大きな影響を及ぼす可能性が示された。さらに、同じ果実・種子を利用していても、油脂のみを採食して種子を残すアカテガニと、種子自体を破壊するクロベンケイガニが共存することで、温帯海岸林における植物構造や更新過程に陸ガニが複雑に関与する可能性がある。


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