| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-111  (Poster presentation)

何故アオスジアゲハは成熟葉の上にいるのか?【A】
Why Graphium sarpedon stays on mature leaves.【A】

*野波蒼空, 児玉凌汰, 長屋光俐, 辻内樹(岐阜県立岐阜高等学校)
*Soku NONAMI, Ryota KODAMA, Hikari NAGAYA, Tatsuru TSUJIUCHI(Gifu high school)

アオスジアゲハ(Graphium sarpedon)は,幼虫の食草であるクスノキ(Cinnamomum Camphora)が街路樹などに利用されているため市街地によく見られる。幼虫は採食の時間以外は葉の表で静止して過ごしていた(以降,この状態を「眠状態」と呼ぶ)。葉の表は飛翔する鳥や蜂などの捕食者に見つかりやすくなるのに,何故葉の表で眠状態になるのか。また,捕食者に見つかるリスクにどう対処しているかを調べることにした。
 体色が黒い2齢以下の若齢幼虫と3齢以上の緑色の幼虫に分けて,眠状態となる位置を記録した。その結果,3齢以上の幼虫は表で眠状態になる割合が高く,黒い若齢幼虫は表裏の割合に明確な差が見られなかった。また,幼虫を飼育していると,眠状態になる葉に採食の跡はなく,前日から全く移動していないのに大量の糞が落ちていた。幼虫は夜に活発に活動するのか,また,どうやって同じ場所に戻るのか疑問に思い,2週間の動画撮影を行い,幼虫の行動を分析した。その結果,昼にも採食はあったが,採食時間は夜の方が長いことが分かった。また,幼虫は採食する葉に移動する時に体を前後に振動させる特徴的な動きが観察された。幼虫が移動した枝を双眼実体顕微鏡で観察すると目印となる糸が付着していた。幼虫はこの糸を頼りにもとの葉に戻り眠状態となっていたと考えられる。
次に,葉の上で眠状態になる目的は,日光に当たることだと考え,光の有無の条件を変えて飼育実験を行った。その結果幼虫体色は,光有りで緑色,光無しでは黄色になった。このことから,葉の表で眠状態となるのは,日光にあたり葉に擬態することが目的だと考えられる。実際,幼虫の体色と葉の色をImageJで解析したところ,日光に当てた幼虫の方が葉に近い色を示した。先行研究により成体の翅にはビリン系の色素が含まれており,日光により青に変色することが分かっている。幼虫が葉の表にいるのは,この色素を常に青色に保ち,葉に擬態し捕食を逃れる手段だと考えられる。


日本生態学会