| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(ポスター発表) PH-112  (Poster presentation)

北アメリカ大陸からの外来種 ~爪痕の追跡から判明した生息地拡大~【A】
The fate of raccoons, invaders from North America Tracking claw marks reveals habitat expansion【A】

*大森奏, 阿知波ハル, 平松侑大, 丸尾泰雅, 山内希一(浜松学芸高等学校)
*Kanade OMORI, Haru ACHIWA, Yuuto HIRAMATSU, Taiga MARUO, Kiichi YAMAUCHI(Hamamatsu Gakugei High School)

本研究は、特定外来生物アライグマを対象として、以下の3つの目的で実施した。1つめは、市街域と山間域の境界に位置する里山環境である静岡県立森林公園に自動撮影カメラを設置し、公園内におけるアライグマの生息および分布を把握することである。2つめは、寺社を中心とした木造建築物において爪痕等の痕跡を探索し、より広域での生息分布を推定することである。3つめは、森林公園内で確認された樹木幹上の爪痕の特徴と、オンライン上で公開されている哺乳類の樹木登攀動画を比較検討し、爪痕を残した哺乳類種を特定することである。自動撮影カメラ調査は2021年5月から2025年3月の期間に実施し、公園内にカメラ15台を設置した。アライグマが撮影された場合は、撮影日時、撮影場所、行動を記録した。その結果、アライグマは18回撮影され、合計20個体が確認された。活動は主に夜間であり、小川沿いで頻繁に撮影された。寺社を対象とした爪痕調査では、調査対象63社寺のうち36地点でアライグマと推定される爪痕が確認された。一方、寺社および農業関係者へのアンケートでは被害認識は確認されず、現時点で生息密度は低いと推定された。さらに、森林公園内の樹木幹上の爪痕調査では、アカメガシワ、ヤブツバキ、サカキといった3種の幹に多数の爪痕が認められた。爪痕が残る要因として、樹皮の厚さや硬さが関係すると考えられる。以上より、浜松市域ではアライグマが広範囲に生息すると推定され、調査手法として、自動撮影カメラによる調査や社寺などの木造建築での痕跡調査に加えて、特定樹種の幹上の爪痕調査も有効であることが示された。今後、森林公園周辺域ではアライグマによる果実廃棄物の利用による個体数増加や両生類などの希少生物への影響が懸念されるため、継続的なモニタリングが求められる。


日本生態学会