| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-123 (Poster presentation)
粘菌とは、変形菌の一種であり、生態系内では、バクテリアやカビを食べることで、微生物の過剰繁殖を抑制し、微生物群集の多様性を保っていることが知られている。また、迷路を解くなど「知的」な行動を示すことから、情報処理のモデル生物としても注目されている。しかしながら、粘菌の好む匂い物質について詳しいことは分かっていない。そこで、私たちは人間にとって匂いの強い物質が粘菌の行動に影響を与えるのではないかと考え、実験を行った。初めに、粘菌の動きは匂いの強い物質の影響を受けると考えて実験を行った。実験Ⅰでは匂い物質としてオレンジ、シナモン、レモン、クミンを用いた。作成した寒天培地の中央に粘菌を置き、オレンジの皮を培地の端に置いた。その後、23度に保った暗所で24時間培養し、粘菌の動きを記録した。
結果については、粘菌の動きについて基準①②を設定し、合算して評価した。(内訳:①対象に覆いかぶさっている3p、接しているだけ2p、近づいているだけ1p、②すべての粘菌が対象に向かっている1p、一部だけが近づいている0p、すべての粘菌が遠ざかっている-1p)
結果、ポイントが多い順にオレンジ(8p)、レモン(7p)、クミン(5p)、シナモン(0p)となった。この結果を踏まえて、実験Ⅱでは成分に着目し、ブドウ糖と、オレンジやレモンに特に多く含まれているクエン酸を用いて実験を行った。
方法は実験Ⅰと同様にして、それぞれ6回の試行を行った。クエン酸に対してはすべて遠ざかった。また、ブドウ糖に対しては、近づく場合と近づかない場合がそれぞれ2回で、一定の傾向はみられなかった。考察としては、粘菌はオレンジに含まれるこれら以外の物質を選好すると考えられる。また、クエン酸やブドウ糖は培地に溶け出してしまったため、急な濃度の変化に粘菌が忌避行動を示した可能性がある。今後、別の物質を使い、実験を継続する予定である。