| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) Q02-02 (Oral presentation)
生態系の状態を評価する研究は重要な課題のひとつであり、今後は生態系への攪乱の影響や保全活動の効果を検証するための応用が一層進むと考えられる。攪乱や保全活動 (以下eventとする) が生態系に及ぼす影響の評価には、eventの前後や有無を比較する手法が広く用いられてきた。Eventの影響を1対1で比較して評価する場合、計測誤差 (不正確な記録)、人口学的確率性 (出生や死亡など)、環境の確率性 (温度や降水量など) といった「stochasticity」により、影響を正確に評価できない可能性がある。
参照可能なevent前やevent無しのデータが十分にある場合には、仮想的な反事実の予測データを生成する等の統計手法を用いることも可能である。しかし、eventの発生は事前に把握できない事例がほとんどであり、eventの無い対照地域を設定することは容易ではなく、eventの前の生態系の状態を記録することはさらに困難である。その結果、比較可能なeventの前やevent無しのデータが限られた状況で生態系の状態を評価せざるを得ない場合がしばしば生じる。
そこで本発表では、比較可能なデータが限られる場合においても、複数の生態系の状態を参照することによって、「stochasticity」の影響を軽減できる評価法を提案した。なお、生態学的安定性においては、総現存量 (個体数や被度などで定量) と種組成 (非類似度などで定量) の側面間で解釈が異なる事例も報告されているため、各側面に対応した2つの評価法を具体的に提示した。
さらに、この評価法を簡単な仮想データに適用したところ、1対1の比較に基づく従来手法と比べて過小または過大評価が生じにくいこと等が示唆された。また、提案した評価法を用いて、2011 年に発生した東北地方太平洋沖地震の直後および地震発生から7年後の岩礁潮間帯の生物群集が地震前と異なる状態にあるかどうかを、総現存量と種組成の両側面から同時に可視化した。