| | 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
一般講演(口頭発表) Q02-04 (Oral presentation)
外来種は、在来種との資源競争や交雑、環境改変等を通して、在来生態系を脅かし、生物多様性を減少させる主要な要因となる。近年、国外から持ち込まれた「第1の外来種」に加えて、在来種が国内の自然分布域外に持ち込まれた「第2の外来種」である国内外来種が注目されている。国内外来種は、在来集団の遺伝的撹乱を引き起こす重大なリスクとして認識されつつある。特に、一生を淡水域で過ごす純淡水魚類は、山地や海によって容易に集団が隔離されるため、地域分化の程度が回遊性の種と比べて大きく、国内外来集団との交雑による遺伝的撹乱のリスクも大きい。しかし、水産放流や観賞用個体の逸出などによって、国内外来種の問題は日本全国の淡水魚群集で深刻になりつつある。さらに、国内外来種が在来生態系に与える影響は、交雑による遺伝的撹乱以外にはほとんど知られていない。
荒川水系の一支流の湧水河川では、地元のボランティア団体が長期にわたって淡水魚類の捕獲調査を定期的に実施しており、8種の在来種と4種の国内外来種が確認されてきた。本研究では、このような長期の群集構造データを解析し、在来群集に国内外来種が与える影響を評価した。調査は2011年から2024年まで概ね毎月実施され、種数と個体数、環境情報が記録された。採集努力量は多少の変動はあったものの、統一されているものとして扱った。データ解析の結果、2018年から2020年にかけて、在来種4種の個体数が顕著に減少した一方、それまで低密度で維持されてきた国内外来種3種の個体数が顕著に増加したことが明らかになった。当該湧水河川の水温等の環境は、調査期間を通して安定していたことから、種間競争によって群集動態が駆動された可能性が示唆された。本研究は、在来群集から国内外来群集へのレジームシフトが、環境変動や交雑がない条件下において生じうることを示す、重要なケーススタディとなる可能性がある。