| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


一般講演(口頭発表) Q02-07  (Oral presentation)

日本列島の森林性糞虫の群集構造特性とその規定要因
Characterization of dung beetle assemblages in forests across the Japanese archipelago

*岸本圭子(龍谷大学), 菱拓雄(福岡大学), 黒川紘子(京都大学), 兵藤不二雄(岡山大学)
*Keiko KISHIMOTO(Ryukoku Univ.), Takuo HISHI(Fukuoka Univ.), Hiroko KUROKAWA(Kyoto Univ.), Fujio HYODO(Okayama Univ.)

森林の食糞性コガネムシ(以下、糞虫)は、森林の断片化や、哺乳動物の多寡を通じた森林環境の変化に対して、種組成や個体数が変化することが先行研究によって知られている。しかし、先行研究の多くが新熱帯域を中心に行われてきたもので、温帯の森林、特に日本の広域にわたって森林の糞虫群集の特性を示した研究はほとんどない。昨今、日本の森林は、管理不足やシカの分布拡大などによる環境の変化が著しい。森林の物質循環を担う昆虫群集を対象に、森林環境への応答様式とそれを左右する生物的・非生物的諸要因を解明することが今後の森林管理策の構築にとって重要な知見となりうる。本研究は、沖縄から北海道まで広範な気候・環境条件を有する18か所の森林で糞虫群集を調査した。それらの群集の特性と規定する環境要因を明らかにするため、種数、個体数、種組成、推定体重の群集加重平均(CWM)および体長と推定体重に基づく機能的分散(FDis)を目的変数とし、年平均気温(MAT)、年平均降水量、土壌特性、植物形質(LMAおよびLDMC)、ニホンジカの在・不在を説明変数とし、一般化線形モデルによって解析を進めた。その結果、MATが有意な影響を示し、寒冷になるほど推定体重のCWMが高くなる傾向が見られた。寒冷地では大型種のセンチコガネが優占していたことが理由として考えられた。土壌pHは糞虫の個体数と負の関係を示し、シカがいる森林では、地点間でばらつきは大きいものの個体数が増加する傾向がみられた。糞虫のFDisはいずれの環境変数とも有意な関係は見られず、植物形質についても有意な効果は検出されなかった。種組成はMAT、土壌pH、シカの出現状況によって変化したことが示唆された。気候、土壌条件、およびシカの出現状況は、日本の森林性糞虫群集を規定する重要な要因であることが本研究で示された。


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