| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
シンポジウム S02-2 (Presentation in Symposium)
北海道の農地を守る防風林は、風害軽減や風食防止に加え、生物多様性保全にも重要な役割を果たしてきた。一方で、老朽化による減風機能の低下や、更新・伐採に伴う希少生物への影響が課題となっている。筆者はこれまで、ネイチャーポジティブな防風林管理の実現を目的に、多面的機能の定量評価と社会実装に向けた研究に取り組んできた。ドローンおよびiPad LiDARを用いた三次元計測により、農地の土壌保全機能を精密に評価するとともに、人工防風林において絶滅危惧種ヤチカンバを確認し、避難地としての保全価値を示した。また、道東地域のカラマツ防風林では、管理方法や景観構造がチョウ類および開花植物の多様性維持に貢献することを明らかにし、草刈り時期の調整によって国内希少野生動植物種アサマシジミ北海道亜種と食草ナンテンハギの双方を増加させられることを実証した。これらの成果は、既存の管理方法に組み込めるようマニュアル化し、パンフレット「役に立つ防風林」として自治体に配布したほか、地域住民とともに防風林の機能を体感的に学ぶ野外体験型ワークショップや、防風林の樹木の香水づくり・植物標本作成を組み合わせた室内体験型イベント、防風林の昆虫標本作成体験会などを通じて、地域管理者や市民の理解促進に活用している。しかし、防風林管理は利害関係が複雑であり、多面的機能評価や一過的な普及活動のみでは合意形成が難しい。今後は管理者や農家を対象とした意識調査を行い、利点の共有と課題回避策、次世代に向けたコミュニケーション手法を組み合わせることで、持続可能な防風林管理の推進を目指す。