| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
シンポジウム S02-4 (Presentation in Symposium)
自然生態系に生息するハナバチをはじめとした花粉媒介昆虫(送粉昆虫)は野生植物の繁殖に貢献しているだけではなく、果樹・果菜といった農作物の生産においても、送粉サービスという役割を果たしている。このような送粉サービスは、私たち人間の生活の質を高めるだけでなく、自然生態系の維持において無視できないものである。しかし近年、世界的に昆虫の減少が報告され、ハナバチについても種多様性や個体群の減少が懸念されている。日本各地でも同様の減少が生じていると考えられるが、明確に示される根拠はいまだ少なく、実態の解明はほとんど進んでいない状況である。その中で、果樹園で花粉媒介に利用されるマメコバチの減少が新聞などメディアでも取り上げられるようになった。飼養されるセイヨウミツバチだけでは十分とは言えず、野生植物の保全と農作物生産の維持のどちらに対しても、花粉媒介昆虫の保全は喫緊で取り組むべき課題の一つとなっている。我が国において、ハナバチの種多様性と個体数を維持していく上では、基礎生態に関する知見を集積しつつ、私たち人間が自ら進んで、生息場所の設置・管理や好適な餌資源植物の確保をしていく必要がある。この課題を解決していく上では、国の省庁や研究機関の活動だけではなく、一般市民の参画や理解が求められる。そのため、多くの人々にハナバチの存在と重要性に気づいてもらい、自分たちでも行なえる活動や取り組みを始めてもらう事が肝心である。ハナバチに関する興味関心は徐々に高まりつつあり、学校での養蜂活動やBee Hotel(人工巣)の設置も進みつつある。本講演では、日本の生態系に生息するハナバチの現状と課題を紹介しつつ、保全に向けた取り組みや農業・環境保全への活用についての展望を概説する。