| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
シンポジウム S02-5 (Presentation in Symposium)
水田生態系の上位捕食者であるタガメ Kirkaldyia deyrolli はカメムシ目コオイムシ科に属する日本最大の水生昆虫である。本種の個体群を維持するためには、多様な水生動物が生息する環境が必要であるため、アンブレラ種としての側面をもつ。池沼や沼のような止水的環境を好み、1950年代頃まで水田で良く見られる普通種であった。しかし、水田への残留農薬の散布、開発や耕作放棄地の増加による水田環境の消失、夜間の外灯(水銀灯)の増加により個体数が減少している。また、ウシガエルLithobates catesbeianusやアメリカザリガニProcambarus clarkiiなどの侵略的外来種の侵入・増加による捕食圧の増加で、本種の個体数が減少することが知られている。現在は環境省レッドリストで絶滅危惧II類に選定、地方版レッドリストでは2025年現在、7都県で絶滅している。実際はもっと多くの地域で絶滅に近い状況である。さらに、ペットとしての需要の高さもあるため、上記のような減少要因により個体群が縮小化したところで、乱獲によりとどめを刺された個体群も知られる。
そこで、環境省は2020年2月にトウキョウサンショウウオHynobius tokyoensis、カワバタモロコHemigrammocypris negelectusとともに特定第二種国内希少野生動植物種に初めて指定し、話題となった。その後、本種が生息できる環境の保全と、個体数の回復を図る目的で『タガメの保全の手引き』(環境省 2023)を作成・公開した。本講演では、私がこれまでに取り組んできた研究とタガメの保全の手引きができるまでの過程を紹介し、マニュアル作りに必要な取り組みとその成果、さらに今後の課題について紹介したい。