| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


シンポジウム S02-6  (Presentation in Symposium)

兵庫県でのシカ管理と生態系回復に向けた目標設定
Setting Goals for Deer Management to Achieve Ecosystem Restoration in Hyogo Prefecture

*高木俊, 藤木大介(兵庫県立大学)
*Shun TAKAGI, Daisuke FUJIKI(Univ. Hyogo)

ニホンジカの高密度化は農林業だけでなく生態系にも深刻な影響をもたらしており、生態系機能の低下や絶滅危惧種の個体数の減少要因となっている。兵庫県ではニホンジカの個体群管理を目的とした特定鳥獣管理計画を策定しており、目的として農林業被害の防止に加え、生態系への被害抑制を掲げている。農林業被害の防止に向けては、(1)被害および生息状況の現状把握、(2)生息密度と被害程度の関係性の分析、(3)被害の許容水準にむけた将来目標の設定がなされており、これと同様の考えに基づき、生態系被害の防止にむけたモニタリングと目標設定も行われている。生態系被害の現状のモニタリングとしては、4年に一度、落葉広葉樹林における下層植生衰退度(SDR)の調査を2006年以降行っており、300以上の林分での調査から県下における広域的な生態系の評価を行っている。衰退度と密度指標の関係性の分析では、現在の生息密度と衰退度が将来の衰退度に影響する履歴効果がみられ、目標設定としても、計画期間である5年後および長期目標としての10年後の生息密度低減のシナリオに基づき、目標とする生息密度水準を設定している。
生態系への被害抑制や回復に向けた技術的な取り組みとしては、植生保護柵の導入などが挙げられる。生態系回復のための植生保護柵の設置マニュアル等については十分に整備されていないが、農林業被害防止のための防護柵設置技術の普及やマニュアル化が先行しており、これらの技術は生態系の保全上も有効といえる。加えて、農林業被害防止のための防護柵が結果として希少植生の保全につながる事例も報告されており、農林業被害防止と生態系保全をそれぞれ別で考えるのではなく、共通の考え方や技術を活用した相乗効果を高める取り組みについても議論したい。


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