| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


シンポジウム S02-8  (Presentation in Symposium)

社会との対話に向けた自然再生マニュアル
Ecological restoration manual as a "Communication tool"

*小坪遊(朝日新聞)
*Yu KOTSUBO(The Asahi Shimbun)

 「マニュアル」とは通常、手順書や取扱説明書を意味する。こうした資料類はニュースに取り上げられることもある。社会的ニーズが高いテーマ・分野に関するマニュアルの整備は社会課題の解決に資するという観点からニュース価値があろう。また、あるテーマが社会的に重要性を増せば、マニュアルへの関心やニーズが高まることもあると推測できる。
 2022年の生物多様性条約締約国会議(COP15)に前後して、世界は生物多様性を損失から回復の軌道に載せる“Nature Positive”へと舵を切った。その構想を支える公的な資料類や、国際目標の採択、各国の国家戦略(NBSAP)や法令の整備、企業活動の開示基準などのソフトローといった潮流ができていく中、「具体的に何をすればいいのか」「何をすればNature Positiveにできるのか」は今も大きな課題になっている。
 基本的に地球上のどこで温室効果ガスを削減しても対策につながる気候変動と異なり、生物多様性の保全・再生においては、それぞれの現場の取り組みの積み上げが、総体としてのNature Positiveにつながる。地域や対象生物・生態系、手法に応じた「自然再生マニュアル」の作成は、こうした課題解決を求めるニーズに応え、ひいては持続可能な社会づくりに貢献できると期待される。
 自然再生マニュアルは、各現場で実際に使うユーザーにとって、①使いやすく(わかりやすい、正確)、②読みやすく(ボリューム、ビジュアルなどの工夫)、③情報が入手しやすい(ネット公開、使用後のフォローアップ)ことなどがポイントとなる。ただし、こうしたポイント間には、「詳細で充実した」ものと、「簡潔で要点を押さえた」ものなどのように、トレードオフが避けがたい要素もある。ユーザーとやりとりしつつ、改良できるような仕組みも求められるだろう。


日本生態学会