| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
シンポジウム S03-1 (Presentation in Symposium)
植物の葉などの化石には、植食者が残した齧り痕・潜葉痕・虫こぶ形成などの食痕が、形を保ったまま保存されることがある。多くの場合、動物本体は残らないため種の特定は難しいが、食草の系統と摂食・潜孔・産卵といった行動痕の形から、分類群に由来するシグナルを読み取ることができる。食痕を現生の対応例(modern analog)と比較し、識別可能な形態を「Damage Type(DT)」として整理する枠組みが整備されている。DTを植食者の機能的(あるいは系統的)多様性の指標として用いることで、放散や大絶滅、多様性の地理分布の形成史、気候変動の影響などを地質学的時間スケールで検証する研究が発展しつつある。このような機能群に基づいて古群集間での比較を行うアプローチは、現生種を対象とした形質生態学(trait-based ecology)と共通点が多い。そこで本講演では、現生の進化生態学と古生態学研究に関わってきた視点から、食痕化石研究の意義や課題を分かりやすく紹介する。化石研究には分野間の垣根を越えた協働が重要であるため、本シンポジウムが参入障壁を下げる機会となり、多彩な視点から調査が進むきっかけとなれば幸いである。