| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
シンポジウム S03-4 (Presentation in Symposium)
植物化石はもっとも普通に見られる化石の一つである。陸上生態系の基盤をなす植物は個体数が多く、木本種であれば一生を通じ多くの器官を本体から切り離すため、化石として保存される可能性が高い。また、第四紀研究で特に重要な花粉/胞子といった微化石に加え、葉、種子・果実、花、幹、根などの大型化石、さらには植物の細胞壁に沈澱した珪酸体(プラントオパール)など、多様な部位が化石として保存される。これらが化石となるには地層中に取り込まれる際、各部位が堆積物粒子として挙動・堆積し保存されるため、比重の違いにより環境によって保存される部位が異なるという現象が発生する。これを利用して、たとえば、もとの植生から離れた湖や海の堆積物からも花粉・胞子を連続的に検出できるなど、発想によりさまざまな“利用”が可能となるのも植物化石の利点といえよう。本講演では、植物化石の特性を紹介したのち、化石群集の解析にもとづいた過去の生態研究の事例と、植物自体に記録された生態情報を読む事例を紹介する。
(1)福井県福井市に分布する約10万年前の泥炭層をめぐる研究を紹介する。泥炭層は日本海に沿って形成された砂丘(古砂丘)の背後に位置する湿地帯で形成されたもので、厚さ約3m。花粉の研究から、MIS5EからDにかけた、約11万年前前後の1万年間程度を記録していると推測した。ここでは、大型植物化石が生育場で葉や枝を落とし化石となった状況(準現地性の産状)から、絶滅種を含んだ植生の優占種が遷移する過程を明らかにした。これを受けて、より古い時代の湿地環境の堆積物に含まれる優占種を考察した事例も紹介する。
(2)2つ目は、植物化石として比較的多産する葉に残された生態情報を読み取る事例を紹介する。当該植物が生きていた当時に他の生物から受けたストレスの影響や、気孔に残された環境情報について近年取り組んでいる研究例もあわせて紹介したい。