| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
シンポジウム S04-2 (Presentation in Symposium)
種の保存法に基づく国内希少野生動植物種については、保護増殖事業計画を策定することができるとされている。保護増殖事業計画には必要な事業内容が示されており、種ごと、事業ごとに予算を要求し、各事業が実施される。
奄美大島においては、アマミノクロウサギ、アマミヤマシギ、オオトラツグミの3種の保護増殖事業が実施されている。この3種については、保護増殖事業計画のもとに保護増殖事業10ヶ年実施計画が策定されており、具体的な目標と評価指標が設定されている。
この3種の保護増殖事業計画は1999年(アマミノクロウサギのみ2004年)に策定されており、確認できたもので2007年から2025年までに約1.5億円の費用が使用された。内訳は、モニタリング、検討会開催、普及啓発、ロードキル対策、傷病救護等であった。これらの事業効果は評価が難しく、モニタリングなど不可欠な費用もあるが、減少要因に対する直接的な改善効果は限定的なものと考えられた。
一方で、外来種対策事業として実施されたマングース防除事業では、2000年から2024年にかけて約36.1億円の費用が投じられ、2024年に根絶が宣言された。マングース推定個体数の減少に伴い、希少種3種の推定個体数は明瞭に回復した。マングース防除事業は、①買取制度による大量捕獲、②マングースバスターズによる戦略的捕獲、③探索犬による捕獲と根絶確認という3つのステップで行われ、明確な目標設定と根絶まで予算を確保し続けられたことが成功要因であったと考えられる。
現行の保護増殖事業では事業期間や目標、優先度が明確に示されていない対象種が多い。奄美の事例からは、いずれの施策がもっとも効果的かを選択し、明確な優先度や事業期間を設定していくことと、目標達成まで予算を継続的に投入することの重要性が示唆された。また、個別種の保全という考え方だけでなく、対象とする生態系全体の保全のために効果的な施策かどうかという検討も必要と考えられる。