| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
シンポジウム S05-1 (Presentation in Symposium)
メダカ(Oryzias latipes)は、生理学・遺伝学・行動学など多様な分野で広く用いられるモデル生物である。しかし、自然環境下での生態、特に繁殖生態についてはほとんど研究が行われてこなかった。従来の実験室研究では、産卵は照明点灯前後1時間以内に生じると報告されてきたが、これらは主に明条件下での観察や受精卵の発生段階からの推定に基づいており、産卵開始時刻の直接的な観察例は限られていた。
我々は野外でビデオカメラを用いた夜間観察を実施し、メダカが従来の想定より数時間早い深夜0時頃に求愛・産卵を開始することを明らかにした。この知見をさらに検証するため、半野外環境および実験室条件下で同一系統を用いた24時間連続ビデオ観察を行い、環境条件の違いが繁殖行動に及ぼす影響を定量的に評価した。その結果、半野外環境でも深夜から求愛・産卵が開始することが示された。一方、実験室では暗期中に求愛行動が開始されることが実証されたが、産卵ピークは点灯直後に観察され、(半)自然条件と比較して3~4時間の一貫した遅延が認められた。
この時間的ズレは、人工照明の急激な点灯・消灯サイクルや一定温度など、実験室環境と自然環境の違いに起因すると考えられる。本研究は、モデル生物研究において自然条件下での行動観察が実験室での知見の生態学的妥当性を評価する上で不可欠であることを示すとともに、野外と実験室を往還する研究デザインの重要性を提起する。