| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
シンポジウム S05-2 (Presentation in Symposium)
私たちが毎日眠るように、睡眠は動物の生命維持にとって不可欠な行動である。睡眠はエネルギー節約や、身体や神経系の回復などの多面的な機能があることが知られている。しかし、動物が実際に眠っているか否かは野外では特に区別しにくく、睡眠とそのパタンの適応的意義については驚くほど理解が進んでいない。これまで、行動基準をもとに睡眠を定義する行動アプローチは、実験室環境にて幅広い分類群が眠ることを明らかにしてきた。これを野外個体群に応用できれば、これまで見過ごされてきた動物の睡眠生態に焦点を当てることができるかもしれない。本発表では、サケ科ブラウントラウトを対象に、まず実験室環境で行動基準により睡眠の存在を確かめた。次に、この手法を野外個体群に応用し、自然条件下での睡眠パタンを評価した。その結果、実験室環境では睡眠の3つの行動基準(休息姿勢、覚醒閾値の増加、恒常性調節)を満たすことが確認された。次に、睡眠と休息を区別する指標である覚醒閾値を野外個体群で測定したところ、覚醒閾値の異なる2つの状態(休息と睡眠)を区別でき、それぞれの生息地利用が異なることが明らかになった。睡眠は休息よりも捕食に対して安全な場所を利用し、活動による利益が少ないと考えられる時間に眠る傾向があった。これらの違いは、行動間で捕食者に対する脆弱性やエネルギー節約に関連した生態学的な機能が異なることを示唆している。