| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
シンポジウム S05-3 (Presentation in Symposium)
給餌行動は、形態的に脆弱で探餌に適さない子供の生存率を向上させる子育て戦略として、脊椎動物において広く普及している。一方で給餌に対する依存度や洗練性は、種間もしくは分類群間によって大きく異なる。これまで硬骨魚類においても、様々な子育て戦略が報告されてきた。しかし、魚類における多様な子育て戦略の報告にも関わらず、給餌の報告はほとんどなされていない。そこで本発表において私は、魚類の粘膜(粘膜)給餌について紹介する。この給餌戦略において、親魚は体表面から多くの栄養を含む粘膜を分泌し、稚魚に与える。カワスズメ科魚類を対象とした野外実験および水槽実験、さらには観賞魚雑誌に対する文献調査といった多角的アプローチから、この給餌行動が多くの魚類で観察される子育て戦略であることや、給餌への依存度や機能に大きな種間差を有することがわかってきた。例えば、南米のアマゾン川に生息するディスカス(Symphysodon discus/ aequifasciatus)の場合、自由遊泳直後の稚魚は粘膜以外の餌を食べることができないため、親の給餌がないと餓死してしまう義務的粘膜給餌種である。一方、アフリカの古代湖であるタンガニイカ湖に生息するペリソウダス(Perissodus microlepis)の場合、粘膜給餌はプランクトンの流入が少ない時の補助食としての側面が大きい。また観賞魚雑誌に対する文献調査により、この給餌戦略は魚類に広く普及していることが示唆され、脊椎動物の分泌物給餌の進化モデルとして、高い潜在性を有する可能性がある。