| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


シンポジウム S05-5  (Presentation in Symposium)

ミジンベニハゼの柔軟な性様式
Plastic sexual pattern in the goby, Lubricogobius exiguus

*尾山匠(広島大学)
*Takumi OYAMA(Hiroshima Univ.)

脊椎動物における雌雄同体はそのほとんどが魚類から報告されており、雌性先熟、雄性先熟、双方向性転換、同時的雌雄同体の4タイプが知られている。その中でも、雌雄双方に性転換可能な双方向性転換と、オスとしてもメスとしても同時に繁殖可能な同時的雌雄同体は、低密度分布や個体の移動性が低いといった配偶機会が限られた条件下で進化すると考えられている。
 本研究は、飼育実験と野外観察を併用して、低密度分布のハゼ科魚類ミジンベニハゼの配偶システムと性様式を明らかにすることを目的とした。飼育実験では、本種の繁殖行動を観察し、双方向性転換することを確認した。生殖腺の組織学的観察の結果、オスは精巣のみが発達した生殖腺を保持していた。一方で、多くのメスと全ての単独個体では発達した卵巣と精巣を併せ持つ生殖腺(同時的雌雄同体型)が確認された。なぜ、発達した精巣を維持する必要がなさそうなメスと単独個体が同時的雌雄同体型の生殖腺を保持しているのだろうか。
 飼育実験で明らかになった性様式の機能を理解するため、8か月間に渡る継続的な野外潜水調査を実施した。飼育下では継続的な一夫一妻で繁殖することが推察されていたが、野外では一部ペアのみが一夫一妻で繁殖し、半数以上のペアは短期間で解消していた。さらに、ペアの解消は主にメスの移動によって、ペアの形成は単独個体のもとに卵巣が発達した個体が出現することによって生じる場合が多かった。よって、同時的雌雄同体型の生殖腺を保持するメスと単独個体は性転換が必要となるような社会変化を頻繁に経験していること示唆された。これらの結果から、ミジンベニハゼの同時的雌雄同体型の生殖腺は配偶相手の性に関わらず、迅速な繁殖開始を促進する機能があることが明らかになった。


日本生態学会