| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
シンポジウム S06-4 (Presentation in Symposium)
微生物反応は、食糧生産や温室効果ガスの発生、水質の浄化・汚染など、多様な環境プロセスに深く関わっている。したがって、その制御技術の確立は環境問題の解決に直結する課題である。
しかし、微生物同士が化学物質を介して形成するネットワークは極めて複雑であり、一部の反応を制御するためにも、群集全体におけるふるまいを予測し、その全体構造の中で制御をデザインする必要がある。ところが、数千を超える種からなる群集ダイナミクスを、制御に足る精度でモデル化することは現実的には困難である。
これまで微生物の増殖動態は、主に速度論と化学量論に基づくモデルで記述されてきた。本発表では、そこに熱力学的視点を導入する方法を提案する。微生物のネットワークは化学物質を介して構成されており、すなわち微生物ネットワークは化学反応ネットワークと対応する二部グラフとして表すことができる。この枠組みのもとで、熱力学は反応の進行方向を規定し、ひいては微生物ネットワーク全体の制約条件を与える。
近年、培養実験系における多項目・高頻度サンプリングに基づく熱力学計算から、微生物機能を予測する試みを進めている。本発表ではその結果を紹介するとともに、微生物生態学理論に熱力学理論を組み込むことで、群集機能を理解する新たな段階を切り開く可能性について議論したい。