| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
シンポジウム S08-5 (Presentation in Symposium)
生物の多様性を保全することは、文化の多様性を守ることにつながる。生物多様性と文化多様性の間にある密接な相互関係を指す概念である生物文化多様性は、自然や文化に即した暮らしやビジネスなどのあり方にかかわっている。JBO4中間提言では、生物多様性と文化との関係を文化的サービスの観点から評価している。文化的サービスは「精神的充足、美的な楽しみ、宗教・社会制度の基盤、レクリエーションの機会等を与えるサービス。自然との関わりから育まれてきた宗教や生活習慣等の伝統的な文化等が含まれる。」と定義される。
生物多様性国家戦略2023-2030の「基本戦略2自然を活用した社会課題の解決」に係る評価の結果、文化的サービスは劣化傾向にあった。例えば、子供の自然体験への参加割合、景観の多様性、地域特産野菜の生産量や山菜(天然)の生産量等には後退傾向が見られた。また、国立公園利用者数はコロナ禍による急減から回復しつつあるものの、コロナ禍前の水準には達しておらず減少傾向であった(2023年時点)。文化的サービスの評価では、伝統芸能・伝統工芸などに関する指標が不足し、評価項目が限定されていた。関連する情報の収集、蓄積、指標の開発が急務となっている。
基本戦略2に関する状態目標の1つに「国民や地域がそれぞれの地域自然資源や文化を活用して活力を発揮できるよう生態系サービスが現状以上に向上している」があり、JBO4中間提言には「木材や茅などの自然資源を用いた伝統的な建築や工芸、祭事など地域で引き継がれてきた文化や暮らしが、生物多様性保全に貢献していることに留意する必要がある」と記されている。都市、里山・里海など地域ごとの自然と文化の関わり、伝統知・地域知、そして生物文化多様性を見つめ直しながら、今後の「自然を活用した社会課題の解決」のあり方を模索する必要がある。