| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
シンポジウム S09-1 (Presentation in Symposium)
光合成により樹木が固定した光合成産物は、ソースである葉から師部を通り、シンクである各器官に配分され、一部は根を介して土壌へと送り込まれる。したがって樹木の師部輸送は、植物個体における炭素配分においても、森林生態系炭素循環の視点からも、重要な意味をもつ。高木の師部輸送速度を13Cパルスラベリングで観測した研究結果からは、裸子植物のマツやヒノキで遅く、被子植物のブナやオークで速いことが示されている。この輸送速度の違いは、師板の発達などを含めた樹木進化と関係があるのではと考えた。大阪公立大学附属植物園には11の樹林型を構成する様々な樹種が植栽されており、同じ環境下で多様な樹種を選定するには最適な試験地である。広葉樹の中でも原始的な形質を持つとされるモクレン類(Magnoliids)に属する4種8個体を対象に師部輸送速度を測定した。これらの樹種の師部輸送速度は0.3mh-1程度で中間的な値を示し、樹木進化と師部輸送速度の関連を裏付ける結果が得られた。
また、11の樹林型のうち4つ(タブ型照葉樹林・シイ型照葉樹林・暖帯型落葉樹林・温帯北部型落葉樹林)を対象に森林炭素循環研究を行った結果を紹介する。常緑樹林2林分は1978年より、落葉樹林2林分は1988年より毎木調査が行われており、それらを用いて現存量を推定した。また2010,11年にはリター量、土壌呼吸量を測定した。樹体の炭素固定量は1.2~4.0t C ha-1y-1,NPPは4.7~10.6 tC ha-1y-1であり常緑広葉樹において高い値を示した。このことは同じ気候帯であっても樹林型の違いが炭素固定量を大きく変動させることを示している。また多様な樹種からなる林分はその師部輸送速度も多様であり、光合成産物が土壌に到達するまでの時間も多様である。大阪公立大学付属植物園は、樹種の多様性が炭素循環に与える影響についても考察できる試験地である。