| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
シンポジウム S09-3 (Presentation in Symposium)
温帯域では、潜在植生の半分以上が人間活動の影響下にあると報告されている。落葉広葉樹林は温帯における主要な森林タイプの一つであり、日本では拡大造林政策のもと、スギ・ヒノキ人工林への転換が広く進められてきた。近年は里山の管理放棄や温暖化に伴い、落葉広葉樹林が照葉樹林へ遷移することも報告・予測される。大阪公立大学附属植物園の土壌は、これら複数の転換経路を同一立地で経験している。このため植物園は、立地差の影響を抑えつつ、土壌に対する樹種効果を評価できる「準実験」の場とみなせる。
樹木は種類に応じて、菌根タイプやカルシウム(Ca)循環の特性などを通じ、土壌環境を改変し得る。経済林では生産性維持の観点から、土壌酸性化の緩和に資する樹種構成の解明が求められている。一方、環境林として機能する広葉樹林においても、将来的な照葉樹林化が土壌酸性度や土壌の物質貯留機能に及ぼす影響は十分に整理されていない。
そこで本研究は、施業目標(酸性化緩和や炭素・窒素貯留)に応じた樹種選択に資する知見の提供を目的として、植物園において土壌調査を行った。具体的には、暖帯型落葉樹林、ならびにそこを拓いたヒノキ・サワラ型針葉樹林帯に成立するスギ林・ヒノキ林、さらにカシ型照葉樹林・シイ型照葉樹林を対象に、土壌酸性度指標、比重分画による鉱物結合型有機物量、硝酸イオン濃度、菌叢などを解析した。
その結果、広葉樹林化は必ずしも酸性化緩和につながらず、針葉樹/広葉樹という区分だけでなく、菌根タイプ×Ca循環特性を踏まえた樹種選択の必要性が示された。(構成樹種に依存するものの)針広混交化は、リター層と鉱質土壌の資源バランスを保ち、土壌酸性化リスクを低減する可能性がある。加えて土壌有機物特性にも変化が認められ、とくにヒノキ林土壌には、その持続性の評価に向けて、長期モニタリングと機構検証の必要性が示された。