| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


シンポジウム S09-4  (Presentation in Symposium)

森林植生の違いが母岩を介したカルシウム循環に与える影響
Effects of forest vegetation differences on Ca cycling through bedrock

*太田民久(富山大学), 小口理一(大阪公立大学), 三村美雨(富山大学), 日浦勉(東京大学)
*Tamihisa OHTA(University of Toyama), Riichi OGUCHI(Osaka Metropolitan University), Miu MIURA(University of Toyama), Tsutom HIURA(University of Tokyo)

近年、母岩中に含まれる栄養塩が、生態系における長期的な養分供給を支えていることが明らかになりつつある。母岩はカルシウム(Ca)をはじめとする重要な栄養塩類を豊富に含み、これらは生物化学的風化を通じて生態系へ供給される。Caは、植物や土壌動物の必須元素であると同時に、土壌の酸性化を緩和する機能も有することから、その物質動態は生態系機能に大きな影響を及ぼす。
 母岩を介したCa循環に影響を与える要因のひとつとして、そこに生育する植物の生理・形態的特性が挙げられる。これまで母岩を介したカルシウム循環に有意な影響を与える植物としてスギなど数種類の樹種が報告されてきた。しかし、樹木の中でどの程度一般的に母岩由来の養分を利用する能力が備わっているのかは、分かっていない。本研究では、同一の地質・気候条件下において生育した樹種を対象とし、ストロンチウム同位体比(87Sr/86Sr)分析を用いて植物体中Caの起源を推定することで、母岩由来Caを積極的に利用する樹種の特定を目的とした。
調査は、大阪府交野市に位置する大阪公立大学附属植物園において実施した。本植物園は、花崗岩を母岩とし、異なる樹林型が同一の気候・地質条件下で再現されている。試料は各樹林型に生育する樹木の葉、母岩、雨水を採取し、87Sr/86Srを測定した。
 その結果、植物葉の87Sr/86Srは樹種間で有意に異なり、森林の樹種組成によって母岩を介した物質循環が変化することが示唆された。そして、スギ以外では、ヒメコマツおよびシリブカガシにおいて、母岩由来の物質をとくに多く含む傾向が認められた。これは、各樹種が、乾燥地や寒冷地といった生育環境に適応する過程で獲得した、根の生理・生態的特性が影響していると考えられ、それら形質も分析していく予定である。


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