| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
シンポジウム S10-2 (Presentation in Symposium)
多くの生物現象は多数の構成要素間の相互作用によって駆動される複雑適応系である。これらの構成要素間の相互作用を特定することは、システムレベルの現象を理解し、予測・制御するうえで欠かすことができない。本発表では、時系列データから構成要素間の相互作用を特定する方法として、生態学でよく使用される収束クロスマッピング(Convergent Cross Mapping; Sugihara et al. 2012)について注目する。収束クロスマッピングは、特定の統計モデルを指定する必要のないノンパラメトリック手法で、生態学のように相互作用の関数形を調べることが難しい非線形な動態への適用に適している。しかしながら、収束クロスマッピングは他の変数の動態を考慮したうえでの因果検出(いわゆる条件付き因果推定)を直接的に行うことはできない。これは、収束クロスマッピングが非線形力学の研究分野から発展してきており、条件付き手法への拡張が難しいためである。条件付き因果推定ができない場合、直接相互作用と間接相互作用の区別ができず、相互作用数の過大評価や動態の予測の失敗につながる。本発表では、収束クロスマッピングと情報理論に基づく転移エントロピー(Transfer Entropy; Schreiber 2000)の関係を明らかにすることで、収束クロスマッピングを条件付き因果推定へ拡張する方法を紹介する。また、シミュレーションおよび実データに適用し、紹介した条件付き因果推定が直接相互作用および間接相互作用を区別するうえで有用であることを示す。