| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
シンポジウム S10-3 (Presentation in Symposium)
土壌微生物は創薬やバイオテクノロジーの源泉であるとともに、炭素循環や窒素循環などの陸域生態系における物質循環を左右する鍵である。しかし、森林土壌は極めて高い空間的不均一性を持っており、広大な調査地のどこをサンプリングすべきかという判断は、多くの場合、研究者の経験や直感、あるいは地理的なアクセスの良さといった事情に依存してきた。こうした経験則や慣習に基づく観測は、真の多様性の過小評価や、有用な生物資源の取りこぼしを招く要因となっている。
本研究の目的は、こうした静的あるいは経験的な観測の在り方を、情報科学の手法を用いてデータ駆動型へと再設計することにある。具体的には、調査の過程で得られたデータを逐次解析し、空間統計モデルに基づいて次に調査すべき地点を数理的に算出するベイズ適応的サンプリングを導入する。これは限られたサンプリング数の中で未知の分類群を効率的に発見するための、データに基づく合理的な野外調査戦略の構築を目指す試みである。
本発表では、森林小流域の細菌群集データおよび全球規模の菌類群集データを用いたシミュレーション結果を交え、従来の手法と比較して本手法がどの程度サンプリング効率を向上させうるかを検証する。その上で、なぜいま生態学にこの手法が必要なのか、また、観測の再設計が将来的な多様性モニタリング基盤や生物資源の探索をどう変えうるのか、その展望を中心に議論したい。