| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
シンポジウム S10-4 (Presentation in Symposium)
微生物生態系に内在する複雑な相互作用ネットワークは、多様な微生物種の安定的共存を支えるとともに、医療や農業など幅広い分野における生物機能の基盤となっている。とりわけ微生物群集では、栄養源をめぐる競合や代謝産物の授受といった代謝に関わる相互作用が中心的役割を担っており、これらを一般化した群集動態モデルを通じて多種共存の理解が進められてきた。
一方で、こうした相互作用は各微生物が有する代謝ネットワークの制約を強く受ける。そのため、実際の生体メカニズムに基づいて群集レベルの挙動を理解するには、細胞内反応に根差した情報を取り込みつつ、個体から群集へと階層をまたいで統合するボトムアップ型のアプローチが求められる。
近年、オミクス解析によって得られる膨大なゲノム情報を基に、細胞内の生化学反応をシステムとして捉え、それを群集スケールへ拡張する試みが進展している。特にゲノムスケール代謝モデルを用いることで、利用可能な栄養源や構成種に応じて動的に変化する群集内の競合・依存関係をin silicoで再現することが可能となりつつある。
本発表では、ゲノムスケール代謝モデルに基づき、個々の微生物の代謝反応ネットワークから種間代謝相互作用がどのように生じ、それが多種共存にいかなる影響を与えるのかを理解する試みを紹介する。特に、代謝ネットワークに由来する制約のもとで、代謝競合・依存関係が共存状態をどのように形作るのかを、代謝機能の進化的制約という観点から議論する。さらに本手法を腸内細菌叢へ適用し、多様性の維持や崩壊に関わる相互作用を環境と代謝ネットワークの関係性から解析した最新の研究成果についても報告したい。