| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


シンポジウム S10-5  (Presentation in Symposium)

生物群集動態を「種間相互作用動態」から理解する
Toward predicting community dynamics through species interaction dynamics

*藤田博昭(京大・生命)
*Hiroaki FUJITA(GSB, Kyoto Univ.)

野外環境下において、種間相互作用に規定される生物群集の動態は、一定の種組成に落ち着くような振る舞いだけでなく、ときに急激な種組成の変化を示す。この急激な変化が生じた際には、安定状態間の遷移、もしくはアトラクタ構造が変化した可能性がある。さまざまな要因が絡み合う生物群集動態において、こうした変化を引き起こした要因を特定することは非常に困難であった。

この課題に対し、Empirical Dynamic Modeling(EDM)と呼ばれる手法により生物群集動態を再構築し、動態メカニズムの理解を試みるアプローチが提案されている。この手法を用いることで、二つの変数が同一システムに属し因果関係にあるかどうかを評価できるだけでなく、時点ごとに各種の増減が他種に与える影響を定量化することも可能である。

本発表では、二つの異なる水圏細菌群集にEDMを適用し、生物種間の因果関係、すなわち種間相互作用を推定した。さらに、再構築した種間相互作用ネットワークに対して、ネットワーク制御理論で開発された「動態を制御するうえで必要な最小ノード集合」を探索した。その結果、駆動種が関わる種間相互作用が動態の変化に影響を与える可能性が示唆された。加えて、各細菌群集において、動態変化に関与する相互作用のタイプが異なることも明らかになった。

機械学習の発達により、複雑な動態も予測できるようになってきた。一方で、予測の先にある生物群集の制御に関しては、いまだ知見が十分とはいえない。本研究では、ネットワーク制御理論の観点から、制御すべき種の候補が見えてきた。しかし、動態変化のメカニズムはシステムごとに異なっていた。このことは、単にネットワーク分析を適用するだけでなく、生態学的知見を組み合わせ、適切な制御手法を検討する必要があることを示している。


日本生態学会