| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
シンポジウム S11-5 (Presentation in Symposium)
ドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)をはじめとする長鎖多価不飽和脂肪酸(LC-PUFA)は、餌から摂取する量が増えると生存率や成長量が向上することが幅広い動物種で知られている。自然環境下では、LC-PUFAは主に水生一次生産者(珪藻類やクリプト藻など)によって合成され、陸上の一次生産者にはほとんど合成されない。このため、河川とその周辺の陸生の消費者は、水生昆虫によって供給されるLC-PUFAに依存していると考えられてきた。しかし、水生昆虫のバイオマスが減少する時期に、消費者がどのようにLC-PUFAを摂取しているか不明である。そこで本研究は、河川周辺に生息する陸生無脊椎動物のLC-PUFA含量を明らかにし、移動ならびに捕食を介した陸域から水域へのLC-PUFAフラックスを推定した。木曽川の支流で捕獲した21カテゴリの水生または陸生無脊椎動物の脂肪酸分析をおこなった。また、1997年から1998年に幌内川で取得された河川性魚類のエネルギーフラックスデータを用いて、陸域から河川へのEPAフラックス量を推定した。本研究により、年間を通してEPAが水域と陸域の双方向から河川の消費者へ供給されることが示された。貧毛綱やクモ綱といった一部の陸生無脊椎動物は水生無脊椎動物に匹敵するレベルでEPAを含み、さらには魚類に摂取されていた。夏–秋には、底生の水生昆虫よりも陸生の貧毛綱が河川へのEPAフラックスに大きく貢献していた。本研究により、水生昆虫のバイオマスが減少する時期には、陸生無脊椎動物が魚類へLC-PUFAを供給し、魚類の成長に寄与することが示唆された。