| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


シンポジウム S12-1  (Presentation in Symposium)

趣旨説明&新・旧熱帯林樹木における気候・土壌と関連するニッチ分化
Introduction & Pervasive niche differentiation associated with climate and soil among paleo- and neotropical tree species

*青柳亮太, 平田萌音(京都大学)
*RYOTA AOYAGI, Mone HIRATA(Kyoto University)

東南アジア島嶼部・アメリカ大陸・アフリカ大陸の各赤道熱帯地域において、植生(樹木群集)の空間的異質性は土壌栄養や水資源の可給性により説明される。一方、群集を構成する樹木種それぞれの資源傾度に対する応答(ニッチ)は、少数の分類群を対象とした研究がほとんどであり、多様な熱帯樹木の進化におけるニッチ分化の重要性は示されていない。これは、熱帯林は多くの樹種で構成されているため種の個体密度が低く、各種に対し十分なデータを得るためには植生・土壌・気候に関する大量の情報が必要なためである。近年、アメリカ熱帯林において大規模な植生・土壌調査が実施されているが、比較可能なデータが他の熱帯地域には存在せず、熱帯樹木のニッチ分化の包括的理解には至っていない。

本研究では、マレーシア・サバ州の熱帯低地林において、新熱帯の先行研究と比較可能な方法で植生・土壌調査を実施し、熱帯樹木系統におけるニッチ分化の重要性を解明することを目的とした。火山灰土壌、沖積土壌、蛇紋岩土壌、堆積岩土壌など様々な土壌タイプに成立する熱帯林62地点において、植生調査とともにリターの下10cmの土壌を採取した。各土壌についてpH, 全炭素・窒素・リン・カチオン濃度を測定した。アメリカ熱帯でのデータと共に、約900樹種の調査地での出現確率と環境要因との関係をベイズ統計モデルにより解析した。発表では、リンをはじめとする土壌栄養が低地熱帯林の中でも非常に大きな空間変異をもつこと、そしてその変異が降水量と同レベルかそれ以上に熱帯樹木のニッチ分化に寄与していることを示す。これらの結果は、土壌の多様性が熱帯樹木の多様化を生み出す重要なドライバーであった可能性を示唆する。


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