| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


シンポジウム S12-4  (Presentation in Symposium)

菌根菌の物質循環機能の多様性と植物・環境との相互作用
Diversity in carbon and nutrient cycling functions of mycorrhizal fungi and their interactions with plants and the environment

*龍見史恵(沖縄科学技術大学院大)
*Chikae TATSUMI(OIST)

菌根菌は植物と共生関係を形成し、植物から炭素を受け取る代わりに水や窒素・リンなどの栄養塩を供給することで、特に養分へのアクセスが制限された土壌環境における植物の生育を強力に支えている。菌根菌間には養分獲得能力の差異が存在することが知られており、とくに外生菌根菌とアーバスキュラー菌根菌は、地球上の植物バイオマスの80%以上を支える主要な共生型として、その機能的差異が広く認識されている。さらに外生菌根菌の内部においても、利用する養分の種類や形態に対する選好性の存在が古くから示唆されてきたが、近年の大規模菌類ゲノム解析により、それらの違いが遺伝子レベルで裏付けられつつあり、菌根菌の機能的多様性に対する理解は飛躍的に進展している。この機能的多様性の解明は、土壌中の養分利用可能性や植物の養分要求が菌根菌群集構造を規定している可能性を検証可能にし、群集構造の解釈に新たな視点をもたらしうる。さらに、土壌や根を対象としたメタトランスクリプトーム解析の導入により、「どの菌類が」「どの機能を」「どの環境条件下で」発現しているのかを評価することも可能となった。本講演では、土壌の多様性、とりわけ養分利用可能性の多様性に応じて菌根菌やその他菌類の群集構造および機能発現がどのように変化し得るのか、さらにそれを最新の分子生態学的手法によっていかに観察・解釈できるのかを、事例とともに紹介する。さらに、土壌の多様性が植物の多様性を規定する過程において、菌根菌がどのように作用するのかについても議論したい。 


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