| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
シンポジウム S12-5 (Presentation in Symposium)
蛇紋岩土壌は通常、植物の生育に厳しい環境であるが、このような特殊な環境への耐性を有し適応できれば、競争の少ない生育適地ともなりうる。このような蛇紋岩土壌への植物の進入・定着において、順応するためには植物自体の生理的作用が必要である一方、植物と共生する内生菌にとっても即応しなければならない。こうした運命共同体である内生菌の作用が植物の蛇紋岩適応を促進した可能性について議論する。
キク科多年草のサワシロギクは日本の固有種であり、九州から北海道までの湿地に生育する集団(湿地型)と、東海地方の蛇紋岩土壌に生育する集団(蛇紋岩型)があり、繁殖特性などの生態的分化が生じており、さらに蛇紋岩集団間にも耐性の差がある。また、サワシロギクの蛇紋岩耐性は主に土壌のNiに対して反応し、特に発芽段階においては、その生育地のNi濃度に対応していることが明らかになった。ところが、蛇紋岩型の種子を表面滅菌すると、生育地である蛇紋岩土壌であっても発芽率が著しく低下したため、初期成長に種子内の微生物が関与していることが考えられる。そこで、内生菌におけるNiを無毒化するキレート能を評価し、蛇紋岩型集団の成立過程でどのように内生菌が寄与してきたかを推定した。
蛇紋岩型7集団はSNP解析により遺伝的には4つのグループにまとまり、この4グループの種子から得た内生糸状菌について、Niのキレート作用の強度を測定したところ、蛇紋岩型の蛇紋岩耐性の強さと対応していた。植物炭疽病菌であるColletotrichum属は複数の集団の種子内部から検出され、共通起源と推定されたColletotrichum間でもキレート能が異なっていた。そのため、サワシロギクでは種子を通じて適した蛇紋岩耐性の内生糸状菌を垂直伝播し、さらにそれぞれの土壌環境に応じた糸状菌との共生関係を強化し適応してきたと考えられる。加えて、他種の蛇紋岩耐性においても内生菌が関与している可能性についても述べたい。