| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
シンポジウム S13-2 (Presentation in Symposium)
平成23年3月11日の東日本大震災により発生した福島第一原子力発電所の事故により、福島県では環境中に大量の放射性物質が放出された。その影響により、家を残して避難することを余儀なくされ、現在も帰還できない住民が多く存在する。公共施設等では放射性物質の除染作業が行われ、徐々に復興が進んできているが、森林内はほとんどが手つかずで、高い放射線量レベルの場所が多く存在したままである。森林内の放射線量レベル及び放射性物質の分布を把握し、森林内から住民の生活圏内への放射性物質の循環過程を把握することができれば、事故影響評価上重要であるだけでなく、住民の帰還に伴う安全・安心を醸成するための重要なデータとしても活用できる。しかし、福島県には広大な面積の森林が存在するが、立ち入りしやすい場所ばかりではないため、人の手だけで放射線を計測することは難しいのが現状である。そのため、我々は機動力の高いドローンで効率的かつ広域的に森林内の放射線を計測することに着目し、ドローンに搭載する小型放射線量計の開発を進めてきた。小型放射線量計は、CsI検出器とボードコンピュータで構成し、1秒間隔で空間放射線量率を測定することで、ドローンが森林内を飛行しながら細かい位置分解能でデータを取得できるように設計した。そのデータから作成したマップは、一目で森林内の放射線量レベル及び放射性物質の分布の状況をつかむことができ、福島県の創造的復興に向けて活用されることが期待できる。本研究で得られるデータは、現状把握にとどまらず、将来の物質循環の変化を考えるための基礎情報となる。放射性物質の挙動を通じて森林生態系の将来像を描くことは、福島の長期的な環境回復を考える上で重要な視点である。
本シンポジウムでは、その開発状況と福島県内の森林の現状について報告し、森林内の放射性物質の環境中での循環から見えてくる福島の30年後の未来について議論したい。