| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


シンポジウム S13-3  (Presentation in Symposium)

森林内飛行を実現するドローン開発
Development of a drone capable of navigating within forests

*野田龍介(東京工科大学), 鈴木智(千葉大学), 中田敏是(千葉大学)
*Ryusuke NODA(Tokyo University of Technology), Satoshi SUZUKI(Chiba University), Toshiyuki NAKATA(Chiba University)

 帰還困難区域の大部分を占める森林地帯において、放射性物質の循環を解明するためには、樹冠下や枝葉が密集する空間を自在に飛行し、広域かつ高密度にデータを取得可能なドローンによるモニタリング技術の確立が不可欠である。しかし、従来のドローンは非GNSS環境かつ障害物が極めて多い森林内において、自己位置の消失や、低視程(照度変化や濃霧)による視覚センサの認識不全、超音波センサの吸音・散乱による障害物検知精度の低下といった課題を抱えている。本発表では、これらの技術的障壁を克服すべく開発した、森林内自律飛行の実現に向けた技術開発について報告する。
 本研究では、生物のヒゲに着想を得た触覚型センサにより、障害物への直接接触、また、接近時に生じる流体的干渉を、プロペラガードに搭載した柔軟なLIG(Laser-Induced Graphene)センサによって電気信号として捉える手法を開発した。本技術は、従来の障害物検知センサが苦手とする隙間の多いツタや細い枝に対しても、物理的接触と気流変動の両面からのロバストな検知が可能である。実機試験の結果、側方20cm以下の障害物検知に成功し、複雑な森林環境における近接飛行を支える検知技術を構築した。あわせて、広域な森林内自律飛行に不可欠な自己位置推定技術として、耐環境性に優れたミリ波レーダーと慣性計測ユニット(IMU)を用いたRadar Inertial Odometry(RIO)を導入した。ここにNDTスキャンマッチングを実装することで、非GNSS環境下での位置推定精度の向上を実現した。
 これらの近接場での触覚型センサによる障害物検知技術と広域でのナビゲーションシステムを統合したドローンは、人による立ち入りが困難な帰還困難区域において、自律的な放射線計測や森林構造調査を遂行する上で、有効なプラットフォームになり得る。本発表では、これまでの開発成果を共有し、本技術が将来の森林内モニタリングに果たす役割について議論したい。


日本生態学会