| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
シンポジウム S14-2 (Presentation in Symposium)
種内相互作用に駆動される進化は、同種内での競争を変化させ、個体群の存続や絶滅を左右することが知られてきた。近年では、このような進化が単一種にとどまらず、生物群集の共存を決めることも理論的に示唆されている。一方、古典的には、共存は種間相互作用に関わる進化によって決定されると考えられてきた。したがって、種内・種間相互作用に駆動される共進化が共存にもたらす影響を明らかにすることは、現実の群集ダイナミクスをより深く理解する上で重要である。本研究では、繁殖干渉する近縁な植物2種を対象に、花粉-胚生産比(性配分)と先行型自殖率の共進化に駆動される共存条件を、数理モデルを用いて解析した。モデルでは、2 種の個体群動態モデルにアダプティブ・ダイナミクス理論を適用し、性配分と自殖率の進化ダイナミクス、およびそれらの進化的最終状態における生態的帰結を調べた。性配分の進化は種内の花粉競争によって、自殖率の進化は繁殖干渉によって駆動される。ここでは、花粉と胚の生産間のトレードオフを仮定し、自殖に伴う近交弱勢を組み込んだ。
解析の結果、近交弱勢があると、性配分と自殖率の進化に二重安定性が生じることが明らかになった。さらに、一方の進化的安定状態では共存が起こるのに対し、もう一方では競争排除が起こることが示された。すなわち、進化の初期状態によって、生態的・進化的帰結が結びついた「生態―進化二重安定性」が生じる。ここから、二次的接触の状況を考えると、2種の形質が非常に類似している場合、性配分と自殖率が収斂し、競争排除に至る一方、形質の類似性が低いと、両形質が分化して共存が起こることが予想される。本研究は、繁殖戦略の進化が多種共存に重大な影響を及ぼしうることを示すにとどまらず、「生態―進化二重安定性」、更には「生態―進化レジームシフト」という観点から、進化群集生態学における新たな研究枠組みを提示するものである。