| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
シンポジウム S14-3 (Presentation in Symposium)
行動生態学は野生生物が競争的であることが多い種内相互作用に対して様々な適応形質を進化させていることを明らかにしてきた。野生生物は多くの場合同時に種間競争にも晒されているが、そのような種間競争のメカニズムとなる個体の振る舞いに注目すると、2種が種内適応形質の副産物を武器/盾にせめぎ合う様子が見えてくる。
沖縄島では、中南米原産のグッピーと北米原産のカダヤシの外来魚同士の種間競争が起こっている。1920年代以降に島全域に分布拡大したカダヤシを、1960年代頃に侵入したグッピーが駆逐していった。現在、沖縄島の殆どの淡水域はグッピーが占めているが、池などの止水域にはカダヤシが残っている。
グッピーがカダヤシを一方的に駆逐したメカニズムの1つに、非対称な繁殖干渉が考えられる。カダヤシ集団の増殖率はグッピー雄と同居させると顕著に低下したが、その逆は起こらず負の影響は一方的だった。グッピー雌は性選択によりカラフルな雄を配偶相手として好み色斑の乏しい雄を拒絶する。グッピー雌は、色斑の乏しいグッピー雄と外見の似たカダヤシ雄からの誤った求愛を拒絶し、適応度低下を免れている可能性がある。
カダヤシが沖縄の止水域でグッピーより優勢なのは、水中に放出する抑制的物質による可能性がある。カダヤシ雌が雌間競争で用いるとされるこの物質の悪影響は、カダヤシよりグッピーに対し強かった。物理的接触を避けつつ水を通す仕切りを設けた水槽で2種の稚魚をそれぞれカダヤシ雌と同居させると、グッピー稚魚でのみ生存率が著しく低下した。2種の長期野外競争実験では、止水ではカダヤシ、流水ではグッピーが有利な傾向が検出され、野外の状況と合致した。
以上より、沖縄のグッピーとカダヤシでは、性選択や雌間競争という種内相互作用に対する適応が副産物的に種間競争の勝敗を左右する前適応となっていると考えられた。