| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
シンポジウム S15-2 (Presentation in Symposium)
タケ類はイネ科植物で、長期間、地下茎やタケノコで栄養繁殖を続けたのち、一斉に開花・枯死するという特異な生活史を持つ。その開花までの年数は竹の種類によって異なり、5年から長いもので120年という周期が知られる。植物の花成において、1年以上かかるものとしては、前年の低温や乾燥がトリガーとなるとされる熱帯樹木の一斉開花や、桃栗三年柿八年という言葉にあるような植物個体の大きさ、栄養状態によるもの等があるが、いずれも周期性をもたない。一方タケ類においては長期の年数にもかかわらず周期性を示すという特徴がある。このことは、植物がどうやって「時」を測り、その情報を記憶しているのかという疑問に繋がる。
この現象は古くから知られており、世界のタケ類41種について文献記録から開花までの年数がまとめられた報告もある。しかし、これらの年数は推定値であり、正確な年数を確かめるために実際にタケを植えて長期間育て、いつ開花するのかを確認することが必要である。東京大学千葉演習林では300年に亘って開花周期を調べる長期試験が1930年代に開始された。モウソウチクでは、このような開花周期や年齢が記録された複数の系統が約100年前から日本で独自に管理されている。
発表者らは、この年齢別系統のサンプルから、発芽から開花までの時系列データを擬似的に再構築することを発案した。トランスクリプトーム解析およびプロテオーム解析から、経時的にその発現量や質が変化する候補分子を探索することを試みている。また、数十年にわたるタイマー機構は細胞分裂でリセットされずに継承される必要があるため、エピゲノム修飾が関わる可能性が高いと考えた。年齢別サンプルを用いてエピゲノム修飾状態を調べ、年齢をカウントしているゲノム領域を探索している。本発表では、これらの研究材料や研究内容の紹介を行う。