| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


シンポジウム S15-4  (Presentation in Symposium)

iPS細胞を用いた霊長類のエピゲノム進化の研究
Study on the evolution of epigenome in primates using iPS cells

*一柳健司(名古屋大学)
*Kenji ICHIYANAGI(Nagoya Univ.)

ヒトとチンパンジーはゲノム配列が98%以上同じであるにも関わらず、さまざまな表現型の違いが認められる。例えば、ヒトの脳には多くの神経細胞があり、脳自体が大型化している。また、ヒトは細菌感染に対して他の霊長類よりも強い防御能力を持つ。このような表現型進化はタンパク質のアミノ酸配列の違いもさることながら、タンパク質産生の量、時間、場所の違いによるものが大きい。遺伝子発現はDNAメチル化やヒストンの化学修飾などのエピジェネティックな機構による制御を受けているので、種間の表現型の違いにもエピジェネティックな違いが関わっていることが示唆されている。そこで、我々はヒトとチンパンジーのiPS細胞を用いて、iPS細胞自体や分化誘導した神経幹細胞やマクロファージのエピジェネティックな種間差(エピゲノム種間差)をmRNA-seq、ChIP-seq、ACTC-seqによって解析した。両種の細胞は大部分においエピゲノムは同じである一方、異なるところが同定された。どのようなメカニズムでエピゲノム差が生じたのかについてさらに解析を進めたところ、ゲノム配列の変化によって転写因子の結合箇所が出現・消失することでエピジェネティックな違いができることが明らかとなった。さらに、レトロトランスポゾンと呼ばれる転移因子が種特異的に挿入されることにより、周辺のエピゲノムを書き換え、遺伝子発現に影響を与えていることが明らかとなった。本発表では進化におけるゲノムとエピゲノムの相互作用のあり方について議論したい。


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