| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
シンポジウム S16-2 (Presentation in Symposium)
枯死木(粗大木質リター)は森林生態系において炭素を貯蔵する重要な働きを担っている。枯死木は細菌から脊椎動物まで多様な生物に利用されており、主要な分解者である真菌や節足動物の働きによってゆっくり分解されるとされている。中大型動物は種子散布や植生変化など生食連鎖において重大なインパクトを及ぼすとよく知られる一方、枯死木とどのような関わりがあるのかについてはいまだに不明な点が多い。しかし中大型動物が枯死木に生息する節足動物を採食することは報告されており、中大型動物は採食・探索行動を通して相当量の枯死木を物理的に破壊し、枯死木分解速度を変化させている可能性がある。そこで、本研究ではニホンザルが節足動物食を通して枯死木分解にあたえる影響を解明することを目的とした。屋久島の暖温帯林において、枯死木現存量、枯死木に生息する節足動物相、枯死木を訪れる哺乳類の行動調査を行った。サルが破壊可能な分解後期の枯死木の多くにはゴキブリ目やコウチュウ目の昆虫が生息しており、サルの主食である果実が不足する冬に枯死木は魅力的な採食場所であることがわかった。また、森林内に枯死木を設置し、防獣ネットで覆った材(サルが破壊できない条件)とそのまま放置した材の体積減少を比較した。すると、そのまま放置した材の体積は防獣ネットで覆った材よりも速く減少した。この結果は、中大型動物が枯死木を細片化することで、その分解を促進する付加的な役割を果たすことを示唆している。屋久島のニホンザルを対象としたケーススタディに加え、これまで断片的に報告されてきた枯死木と中大型動物の関わりについての知見を整理し、中大型動物が枯死木分解過程に関与することで炭素動態に及ぼす影響について議論する。