| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


シンポジウム S18-2  (Presentation in Symposium)

水田からのメタン排出削減とクレジット制度の展開
Mitigation of methane emissions from paddy fields and the development of credit schemes

*南川和則(国際農研)
*Kazunori MINAMIKAWA(JIRCAS)

水田は農業起源メタンの主要排出源であり、中干しや間断灌漑など排水を伴う水管理は、有効な緩和策として政策・炭素クレジット市場の双方で注目されている。本発表ではまず、気候変動が生態系および生態系サービスに及ぼす影響を踏まえ、国が決定する貢献(NDC)等の国際枠組みの下で、農業分野の気候対策の中でも短中期の温暖化抑制に資する対策として水田メタン削減の位置づけが高まっている背景を概観する。次に、メタン排出のメカニズムを踏まえ、水管理の強度と実施時期が削減量と収量リスクを左右する点を、メタ解析・多地点試験の知見から整理する。さらに、水管理の制度的な普及手段として、国内における環境保全型農業直接支払交付金、J-クレジット、途上国での排出削減を対象とする二国間クレジット制度(JCM)を取り上げ、追加性、ベースライン、MRV(モニタリング手続きとデータ提出・検証、ならびにこれらに伴う事務負担)に加え、地域の水利慣行や冬季湛水等の関連施策との整合を含む制度面の課題を比較する。最後に、生物多様性の論点が制度実装に持ち込まれる際に混線しやすい点(評価スケール、関連施策との整合)を整理する。特に議論が農薬・肥料管理に偏りやすい点を念頭に、制度にセーフガード要件がある場合はその順守を前提とし、水管理を生息場条件として扱う際に必要となる記述項目を示す。セーフガードが十分に整備されていない場合には、価値判断に依存する議論ではなく、科学的に検証可能な指標・閾値に基づくセーフガード設計に関する提案が生物多様性研究側から提示されることが望ましい。合わせて、水田メタン削減のMRVで用いられる水管理記録を前提に、生物多様性(セーフガード)を論点として加える場合には、追加で明示すべき情報(評価スケール、実施時期、区画配置など)が生じ得ることを今後の課題として指摘する。


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