| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
シンポジウム S18-5 (Presentation in Symposium)
中干し期間を1週間以上延長する取組は「中干し延長(長期中干し)」と呼ばれ、通常の中干しと比べて水田からのメタン排出量を約30%削減できると試算されている。2024年度には、長期中干しがJクレジット制度として承認されたことを受け、実施面積は前年度の10倍以上となる5万 ha超に拡大した。長期中干しには、開始時期を1週間早める「前倒し」と、1週間遅らせる「後ろ倒し」があり、一般に前倒しの方が取り組みやすいとされている。
一方で、特に前倒しを行った場合、入水から中干しまでの湛水期間が短縮されるため、分散能力の低い魚類や両生類の幼生、水生昆虫類の幼虫などが、退避や変態前に干上がって死滅するリスクが高まることが指摘されている。このため、水田におけるメタン排出抑制と生物多様性保全の両立に向けた解決策の開発が急務となっている。
本講演では、この中干しをめぐるトレードオフに対し、ほ場スケールと地域スケールの双方からの対応策を紹介する。ほ場スケールでは、中干し時に水生動物の退避場所となる「水田内水路(承水路、退避溝等)」の設置や、溝切りによる排水路・水田内水路への移動補助が有効と考えられる。地域スケールでは、中干し期にも水生生物が生息可能な水田内水路や休耕田ビオトープ、中干しを行わない水田を地域内に確保すること、さらに作期分散によって湛水期間を空間的・時間的に分散させる管理の重要性について議論する。