| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
シンポジウム S19-2 (Presentation in Symposium)
寄生性甲殻類フクロムシ(蔓脚下綱・根頭上目)は、カニやヤドカリなど他の甲殻類に寄生するフジツボの仲間である。フクロムシの雌は宿主の体内に根状組織(インテルナ)を張り巡らせ、宿主から栄養を奪取後、宿主腹部に袋状の繁殖器官(エキステルナ)を形成する。一方、フクロムシの雄は雌に比べて極端に小さく(矮雄)、エキステルナに存在する雄受容器内に定着し、精子供給器官として機能する。このように、フクロムシは形態的に極めて顕著な性的二型を示す。これまでの発表者の研究により、ホンヤドカリ類に特異的に寄生するフサフクロムシでは、雌幼生は一年を通して観察される一方、雄幼生は主に秋以降に出現することが明らかとなっており、性比が季節によって極端に変動することが示されている。さらに、詳細な染色体観察の結果、雌は雄よりも染色体を1本多く有し(雌:2n = 31、雄:2n = 30)、雌特異的な余剰染色体に基づくOW/OO型の性決定機構を有する可能性が示唆されている。これらの知見から発表者は、フサフクロムシの雌は通常、余剰染色体を保持した2n = 31の雌卵を産生するが、秋以降には余剰染色体が放出され、2n = 30の雄卵を産生する個体が出現すると考えている。
さらに、フクロムシに寄生されたホンヤドカリ類では寄生去勢が引き起こされると同時に、雄宿主においては二次性徴形質の形態的雌化が生じることが知られている。我々は2種のホンヤドカリ類に寄生するフサフクロムシおよびナガフクロムシを対象として、形態的雌化の進行度は寄生種と宿主種の組み合わせによって異なることを明らかとした。本発表では、寄生者側に焦点を当てたフサフクロムシの季節的性比変動および性決定機構に加え、宿主側に焦点を当てた雄宿主における形態的雌化について紹介する。