| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
シンポジウム S19-5 (Presentation in Symposium)
宿主体内に産卵を行う内部寄生蜂は、宿主へ毒液を注入し免疫や発生を操作することで寄生を成功させる。寄生蜂と宿主は軍拡競争の関係にあり、宿主が抵抗性を獲得する一方、寄生蜂もそれに対抗する能力を進化させてきたと考えられる。近縁種間でも宿主範囲が大きく異なることがあるが、その分子基盤は未解明な点が多い。我々は幅広いDrosophila種に寄生する寄生蜂Asobara japonicaにおいて、宿主幼虫の成虫原基を縮退させる毒タンパク質IDDF1, 2を同定した(Kamiyama et al., 2025)。これらはシグナルペプチドとDUF4803ドメインを持つ分泌タンパク質である。
本研究では、Drosophila aurariaなどの限られた宿主に寄生する寄生蜂Asobara rossicaのゲノムを新規に解読し、両種の毒腺トランスクリプトームを比較した。その結果、A. rossicaの毒腺にもシグナルペプチドとDUF4803ドメインを持つタンパク質遺伝子が複数高発現していることが明らかになった。しかし分子系統解析の結果、A. japonicaのIDDF1, 2のオーソログ遺伝子はA. rossicaには検出されず、両種が異なるDUF4803遺伝子レパートリーを持つことが示された。本発表では比較ゲノム・トランスクリプトーム解析の結果を報告し、寄生蜂における宿主適応の分子進化について議論する。