| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


シンポジウム S23-2  (Presentation in Symposium)

湧水を基盤とした湿地再生による谷津の生物多様性保全—局所から景観スケールまで—
Effects of spring-fed wetland restoration on biodiversity conservation in small valleys: from local to landscape scales

*松島野枝, 平野佑奈, 田和康太, 今藤夏子, 伊藤洋, 西廣淳(国環研)
*Noe MATSUSHIMA, Yuna HIRANO, Kota TAWA, Natsuko KONDO, Hiroshi C ITO, Jun NISHIHIRO(NIES)

生態系を活用した気候変動対策において、防災・治水や水環境管理といった課題解決策は、同時に湿地の生物多様性保全にも貢献すると期待できる。我々はこのような複数の課題解決の基本単位として「流域」に着目した。本研究のモデル地域である千葉県北部の印旛沼流域では「谷津」と呼ばれる地形が多く存在する。谷津は台地の侵食によって形成された谷地形であり、斜面には樹林が、谷底部には湧水が湧くことから、かつては水田として利用されてきた景観的特徴を持つ。しかし、近年はこれらの水田で耕作放棄が進んでいる。また、谷津を含む小流域の土地利用は、湧水を通して谷津の湿地環境へ影響する。谷津の耕作放棄水田を活用した湿地環境の再生は、湿地性生物の生育および生息地の回復と流域内の生態系ネットワークの再構築に寄与すると考えられ、印旛沼流域の各地で広がりつつある。
本発表では、野外での調査や操作実験、遺伝情報解析、モデル解析など様々な手法を用いて、谷津内の湿地再生手法によって異なる動物群集、湧水を利用する種のメタ個体群構造から谷津間・流域間の連続性の評価、さらに将来気候の下での気候変動適応策と環境指標種の影響を予測した事例を紹介する。小水域の活用から流域ランドスケープの管理まで、異なるスケールを対象とした複数の事例を通じて、流域単位の生物多様性保全における実践的視点を整理する。


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