| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


シンポジウム S24-3  (Presentation in Symposium)

アフリカ熱帯雨林における狩猟残滓を介した人間とスカベンジャーの相互作用
Human–scavenger interactions mediated by hunting remains in African tropical rainforests

*橋詰茜(総合地球環境学研究所)
*Akane HASHIZUME(RIHN)

 人為的補助資源(human subsidies)は地球規模で生態系を再編成してきた主要因の一つであり、なかでも狩猟残滓(獲物の解体・加工・消費過程で廃棄される動物体の全部または一部)は、人類史における最も初期の形態である。既存研究の多くは北米やヨーロッパのスポーツハンティングを対象とし、狩猟残滓を短期的・季節的なパルス資源として捉えてきた。一方、アフリカ熱帯雨林では狩猟採集民による通年的な生業狩猟が継続されており、狩猟残滓はより恒常的な補助資源として機能していると考えられる。しかし、他の生物の分布や行動に与える影響など、その生態学的帰結については十分に検討されてこなかった。本研究では、カメルーン南東部の熱帯雨林に暮らす狩猟採集民バカの森林キャンプを対象に、狩猟残滓を利用する脊椎動物スカベンジャーおよび死肉食性昆虫を調査した。バカの狩猟活動に同行し、廃棄された残滓を収集するとともに、その利用者を記録するためにキャンプ周辺に自動撮影カメラを設置した。5地点のキャンプにおいて、ダイカー類などの獲物から、消化器官や毛皮を含む32個の狩猟残滓が得られた。このうち40.6%の残滓では哺乳類(ハナナガマングース、ツリーシベット、オニネズミなど)による消費が確認され、残りの大部分は昆虫類(ハエ類の幼虫、アリ、シロアリなど)によって利用された。獲物はほとんどの場合キャンプに持ち帰って解体され、残滓は彼らの生活空間内に放置されていた。採集植物や農作物などの食べかすも散在しており、これらの生ごみが堆積した場所にはハエ類、ハチ類、チョウ類などの昆虫が活発に飛び回っていた。また、雨上がりの焚火跡でもこれらの昆虫による吸水行動が観察された。こうした現象は、バカが複数の人為的補助資源をキャンプ周辺に集積することで森林内に栄養塩のホットスポットを形成し、人間活動が生態系プロセスの一部として組み込まれていることを示唆する。


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