| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


シンポジウム S24-4  (Presentation in Symposium)

アフリカ熱帯の「半自然草地」:中大型哺乳類の多様性と季節移動
Semi-natural grasslands in tropical Africa: large and medium-sized mammal diversity and seasonal migration

*中島啓裕(日本大学), 本郷峻(地球研・京都大学)
*Yoshihiro NAKASHIMA(Nihon University), Shun HONGO(RIHN | Kyoto University)

 アフリカ大陸には、赤道付近においてもサバンナが見られる。森林化を免れているのは、他大陸の同緯度地域と比べて降水量が限られていることに加え、人間が長期間にわたって野焼きを行うことで植生遷移を妨げてきたためである。こうした人間によって作り出された生息地の不均質性が、種の分布や空間利用にどのような影響を与えているのかについては、ほとんど研究されてこなかった。本研究では、森林とサバンナが共存するガボン共和国ムカラバ・ドゥドゥ国立公園において、自動撮影カメラ100台以上を2年間設置し、中大型哺乳類がそれぞれの環境タイプをどのように利用しているのかを調査した。その結果、森林内部にはコンゴ盆地の熱帯林で一般的に見られる種(チンパンジー、ニシゴリラ、森林性ダイカーなど)が生息していたのに対し、サバンナとその周縁林は、より高緯度のサバンナに典型的な種(エジプトマングース、ウォータバック)や疎林の種(アフリカジャコウネコ、ブッシュバック)によって支えられていた。アフリカゾウは森林とサバンナの間で季節的に生息地利用を変化させ、特に野焼き後の新芽が出る時期にはサバンナを集中的に利用した。これらの知見は、野焼きによって作り出された生息地の不均質性が、動物相の構成とその空間利用パターンの両方に影響を与えることを示している。この地域では、現在の温暖で湿潤な気候条件により森林が拡大しており、サバンナ適応種は低緯度地域で生息地を失いつつある。高い狩猟圧と相まって、多くの種は深刻な個体数減少を経験している。現在、ガボン国内の他の国立公園では、エジプトマングースとウォータバックは確認されていない。これらの結果は、現在の哺乳類群集が人間による攪乱と無関係に成立するものではないこと、既存の生物多様性を保全するためには、野焼きを含む積極的な管理によって植生の多様性を維持することが必要であることを示唆している。


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