| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
シンポジウム S25-3 (Presentation in Symposium)
アマゴとイワナは日本の代表的な河川性サケ科魚類である。四国には元来アマゴのみが生息していたが、近年は移入由来のイワナ個体群の定着がいくつかの水系で報告されている。本研究の調査地である仁淀川水系黒川源流域でも、移入イワナが在来アマゴを減少させながら分布を拡大している。河川性サケ科魚類では、体サイズが大きいほど餌資源を巡る競争において有利であるが、イワナの産卵時期はアマゴよりも遅く、当歳魚期のイワナの体サイズはアマゴよりも小さいことから、この競争においてイワナは不利だと考えられる。一般的に、この餌資源を巡る競争における優位性が河川性サケ科魚類の定着を決める重要な要因の1つだと考えられているが、アマゴの競争圧の下における移入イワナの定着は、この餌資源を巡る競争の優位性では説明できない。本研究では、産卵時期や成長速度の種間差に着目して、移入イワナが在来アマゴを排除しながら定着できる要因を検討した。イワナの産卵時期の遅さは、当歳魚の孵出が遅くなる点で不利だが、産卵床の掘り返し頻度の高い場では、産卵床が掘り返される可能性が低くなるため、有利な特性となりうる。イワナによるアマゴの産卵床の掘り返しについて調べたところ、河川規模の小さい川では、イワナによるアマゴの産卵床の掘り返し頻度が潜在的に高く、産卵床の掘り返しがイワナがアマゴを排除する要因の1つとなりうる可能性を示した。また、両種の当歳魚の成長を追跡したところ、当歳魚期にアマゴよりも小さかったイワナは、1歳でアマゴに追い付き、2歳でアマゴよりも大きくなっており、2歳以降の体サイズ依存の競争においてアマゴよりもイワナが優位になると考えられた。これらの結果から、産卵床の掘り返し頻度が高い場所やイワナの成長がアマゴよりも早い場所では、劣位に見えるイワナがアマゴを排除しながら定着する可能性が示された。