| | 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨 ESJ73 Abstract |
シンポジウム S25-4 (Presentation in Symposium)
特定外来生物コクチバスは、1990年代の国内侵入以降、分布を拡大し在来生態系への影響が深刻化している。本発表では、2015年〜2022年に長野県千曲川中流域で実施した魚類調査および環境DNAモニタリング(ANEMONE:期間2020年~2022年)に基づき、本種の分布拡大プロセスと大規模出水が個体数動態に与えた影響を報告する。
調査対象とした千曲川中流域は、元来コイ科魚類が優占する水域であった。2002年に本種の侵入確認後、個体数は漸増し、2015〜2019年の調査では総個体数の7〜25%を占める優占種となった。ハビタット選好性の解析から、本種は淵を主たる生息場とするが、高密度時には平瀬や早瀬へと進出し、餌資源をめぐり在来魚と競合している実態が示唆された。この間、電気ショッカー等による防除が継続されたが、明瞭な低減効果は得られなかった。
しかし、2019年の東日本台風による記録的大出水を境に状況は一変した。出水後の回復過程において、在来コイ科魚類が速やかに個体数を回復したのに対し、本種は少なくとも3年間、個体数組成1%未満の低密度状態が継続した。この傾向は環境DNA調査の結果とも整合した。本種が大規模攪乱に対して在来種より脆弱であるメカニズムの詳細は不明だが、こうした自然攪乱による個体数抑制効果は、広大な流水域において防除効率を最大化できる極めて重要な「管理の窓(Management Window)」である。この窓が開いている期間(低密度期)に、残存する小集団を徹底的に駆除・封じ込めする戦略は、従来の手法を補完する機動的な外来魚マネージメントとして極めて有効であると考えられた。