| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


シンポジウム S25-6  (Presentation in Symposium)

外来生物法に基づいたわが国の外来種対策:淡水魚類をめぐる経緯・現状と課題
Invasive species management in Japan based on Invasive Alien Species Act: historical review and present issues concerning freshwater fish

*中井克樹(ルイ・パストゥール医)
*Katsuki NAKAI(Louis Pasteur C. for M. R.)

1970~80年代に全国に広がったオオクチバスは、1990年代には都道府県の漁業調整規則により全国的に移植が禁じられたが、意図的な放流を有効に抑制できなかった。そこで、侵略的外来種の生態的被害を防止することを目的とする外来生物法では、規制対象の特定外来生物について放流の瞬間に加えそれに繋がる飼育、運搬・保管という一連の行為も禁止することとし、2005年の施行時にはオオクチバスを含む4魚種が特定外来生物に指定された。現在検討中のものを含め魚類では60種類が特定外来生物に指定されるが、指定に際しては生態学的根拠が重視され、今後も研究者の積極的協力が不可欠である。
特定外来生物指定により放流の厳罰化に加え輸入・流通も禁止されるため、外来魚の新規拡大には一定の抑止効果があるものと想定される。しかし、ブラックバス(オオクチバスとコクチバス)については違法となる意図的放流が法施行後も継続している現状から、先般の同法改正が依拠した中央環境審議会答申でも「違法行為の撲滅」の必要性が謳われ、改正法の附帯決議でも対策の強化が記された。法を犯しても放流が続く背景には、違法行為の結果であってもブラックバスが生息する状況になれば釣りが楽しめるという「入れたもの勝ち」の状況が同法施行後も温存されている事情がある。こうした野外における積極的利用は、現在160種類を超える特定外来生物の中でもブラックバスの特殊性として際立っている。
釣り対象となる外来魚の放流を抑制するには、遊漁という利用の側面においても有効な規制を検討する必要があるが、これには同法とは別の枠組みが必要かもしれない。また、昨今の魚類の指定の検討を巡っては、国内に存在しないが特定外来生物と近縁で生態系被害が想定される未判定外来生物の取扱いや、在来種と酷似した近縁外来種の指定をめぐる状況など、同法の規定上・運用上の課題も見えてきており、今後の積極的な対応が俟たれる。


日本生態学会