| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第73回全国大会 (2026年3月、京都) 講演要旨
ESJ73 Abstract


シンポジウム S27-4  (Presentation in Symposium)

北海道で採取されたマダニから検出されたリケッチア目細菌遺伝子解析
Molecular Analysis of Rickettsiales in Ticks from Hokkaido

*平良雅克(国立感染症研究所)
*Masakatsu TAIRA(NIID, Vet. Sci.)

 北海道はライム病やダニ媒介脳炎などのダニ媒介感染症の報告がある地域である。一方で、リケッチア目に属する細菌については、その分布や保有状況に関する情報は限定的であり、包括的な調査が求められている。本研究では、北海道に生息するマダニにおける病原体、特にリケッチア目の保有状況および共感染の頻度を明らかにし、公衆衛生上のリスクを評価することを目的とした。2008年から2022年にかけて北海道の道東地域6地域で計1,115個体のマダニを採集し、リケッチア科細菌のgltA遺伝子およびアナプラズマ科細菌groEL遺伝子を標的としたPCRおよび塩基配列解析を行った。得られた塩基配列により系統解析を実施した。その結果、シュルツェマダニからRickettsia helvetica(32.1%)、Candidatus Rickettsia tarasevichiae(16.8%)、Ehrlichia muris(4.6%)、Candidatus Neoehrlichia mikurensis(3.8%)の遺伝子を検出し、17個体ではこれらの共感染が確認された。今回遺伝子の検出された細菌はヒトに感染性があり公衆衛生上重要である。しかし国内での患者発生はこれまで未報告である。シュルツェマダニは北海道においてはライム病、Yezoウイルスを含む多種病原体の重要な媒介マダニであり、共感染例の存在は同時感染の可能性と診断・治療の複雑さを示唆する。今後は、臨床現場へのマダニ媒介感染症に対する啓発を行うとともに、マダニの広域かつ継続的な監視体制の整備や診断体制の充実が求められる。


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